《 ハッピーエンド 》



「その戦いちょっと待った!」

「っ!?」
「この声は、」
「見かけないと思っ…!?」

俺の名前を呼ぼうとしたのだろう、妙な発音になってしまった銀朱に一瞥を与え、俺は俺の方…正確にはお姫様抱っこされている人物を見て固まってしまった白梟と黒鷹の方へと歩を進めた。

「白の鳥と黒の鳥の貴方方ならもう感じているだろう?」
「なに、を…その方は…」
「主、なぜ…いや、しかし…。」

戸惑う二人には、俺の声は届いているのだろうか。
二人は完璧に俺ではなく六花を見て固まっているし。

俺はため息ひとつ吐いて、軽い六花の身体を左腕のみで支え、固まった二人の頭へ右手でチョップをかましてみた。

「っ!?」
「だっ!?」
「人の話は聞け。」
「な、なんですか貴方は!」
「ちょっと、君ひどくない?扱いひどくない?」
「人がシリアスに話を始めようとしてるのに全く話を聴いてない二人には丁度良いだろう。」

「うわー横暴。」
「あれは誰なんだ…?」
「し、白梟殿に手を上げるとはめ…!」

視界の端っこのほうでは、3者3様の感想を述べていた。

「…六花も、いい加減起きてくれないと俺の腕がしびれそうなんだが。」
「……すぅ……。」
「………はぁ………。」

多分起きてくれれば一番事情説明が簡単に終わるのだが、契約したことと、システム書き換えでおそらく消費してしまったんだろうという微妙な負い目のようなものがあって、強引に起こすことが出来ない。

「とりあえず、要点だけ言うからな。救世主と玄冬システムはついさっき綺麗さっぱり書き換えてきたので貴方方が争う理由はなくなった。以上。」

「「「「「…は?(え?)」」」」」

俺と六花以外の全員が、きょとん、と目を丸くした。

「あ、兄さん、こいつ六花。今日から俺の、兄さんとは違う意味での半身だから、よろしくね。」
「あ、ああ…。」

兄さんは勢いで頷いて、それから怪訝そうに眉をひそめた。
多分、「で、結局そいつは誰なんだろう」とか考えているのだろう。

「半身、って…、君一体何をしたんだい?それに、システムの変更など、そんな容易に出来ることでは…、」

いち早く立ち直った黒鷹が、珍しくも真剣な表情で俺に詰め寄る。
それはそうだろう。
本来、ベストな場合であっても、二人の鳥の機能停止をしなければ玄冬システムは止まらない仕様だったのだ。
そう。

"研究者以外の手によるものである場合は。"

「言っただろう?俺は、俺が幸せになって欲しいと思う人が幸せに生きられるようになればいいって。むしろ8割は賭けだったけどな。」
「でも、そんなこと…」
「不可能、なはずだった。だけど貴方は理解はできなくても想像は出来ているはず。なぜ欠片でしかなかったはずの彼がこうして実体化しているのか。そして、俺の半身という言葉でも。」

俺の言葉に、黒鷹は言葉を詰まらせたようだった。

「彼が俺に興味を持ってくれたことが最大の幸運なんだよ。そうして、彼が提示してくれた契約が二つ目の幸運…、」

そう答え、俺は苦笑気味にため息をひとつ。

「…ほら、六花。いい加減起きなよ。…君の事をずっと待っていた人が居るんだから。」
「…む、う……なんだ?…。」

うー、と眠そうに、けれどもやっと起きてくれてほっと息をつく。

「…主、なのですか…?」
「ん…?」

震える声は、聴いたことのない音だった。
呆然と、震える声で訊ねられた言葉に、六花は声の主を見る。
そうして、ふわ、と微笑んだ。

「白梟か。」

六花に名を呼ばれ、呆然とこちらを見ていた白梟は、はらはらと涙を零した。
まだ抱っこしたままだった六花を俺は下ろすと、六花はぺたぺたと白梟へと歩み寄る。
いくつか言葉を交わした後、白梟は本当に嬉しそうに、幸福そうな笑みを浮かべていた。

「いいのかい?」
「俺は白梟が嫌いなわけじゃない。白の鳥が嫌いなだけだ。」
「…それ、屁理屈って言うんじゃないの?」

花白があきれたようにツッコミを入れてくる。
まあ、一種の言葉遊びだ。
俺にとっては役割別の意味を持つのだけれど。

「黒鷹こそ。六花に白梟を取られてるけどいいのか?」
「君はまたそういう…。…それより、主の名前は六花というのか。初めて聞いたな。」
「話摩り替えたな。まあいいが。…いや、本人が本気で忘れていたようだったから、考えてみただけだ。」
が考えたのか?」
「いや…あの人結構不思議な天然だから…流れでつけることになって。」
「不思議な天然…言い得て妙だね。」











夢主だって研究者ひとりくらいは抱っこできますよおとこのこだもの。
とりあえずうちの夢小説での脳内主軸の話はだいたいこんな感じ。