《 唐突な発端 》



きっかけは、一体なんだったのだろう。

「え?何、の猫ってリビカって言うの?」
「ああ、なんか変か?」

高校からの友人との会話で、へぇ、とまじまじと頷かれ、気にならないわけはなく。

「なんだよ、何かあるのか?」
「んー、私のやってたゲームで出てくる種族の名前がリビカって言うのよ。」
「ふうん?」
「簡単に言うと猫耳と尻尾が人間にくっついたみたいな種族なんだけど。」
「すごい偶然だな。」
「でしょ?シナリオも面白いんだけど…、」

そこで友人は言葉を区切り、考えるようにしてこちらを見た。

「?」
「うん、まぁ、あれは目を瞑っておけばなんとかなるかな。」
「は?」

わけがわからない。
きょとんとしたままの俺をよそに、友人はじゃあ明日もって来るから。と言って其の話はそこで終わったのだった。








で、友人が持ってきたのは、いわゆる、その、BLゲームというヤツで。

「は!?ちょ、これを俺にやれと!」
「うんうん。発禁シーンは目を瞑って会話読み飛ばせばきっと大丈夫。シナリオはニトキラだから安心して!」

そんな言葉で結局押し付けられるようにして受け取って、帰宅後にため息をつきながらもパソコンにインストールしたのだった。

いや、だってほら、シナリオはしっかりしているみたいだし、問題はエロシーンだけだろう。
別に俺は男に興味があるわけじゃない。至ってノーマルだ。
昔は俺の容姿が整っているとかで男にも告白されたりしてたけど、大人になった今ではめったにないし。
なので、世の男達よりは多少理解はある、ほうだと思う。
…まあ、嫌悪感を抱いてしまうやつも居るには居るので、そのへんは俺も男なので目を瞑って欲しいところだ。

で、なんだかんだと自分に言い訳してるのか何なのかわからないがともかく、俺はそのゲームをクリアしたのだ。
シナリオは確かに良かった。親世代がやたら切ないのは仕様なのかと思わなくもないが。

「…でもなぁ、これ、ルート選んだ相手以外結構老い先短いんじゃないのか…?」

この情け無用さ加減は確かにニトロらしいといえばらしいのだけれど。

「プレイヤーとしてはちょっと心苦しいよな。」

画面の向こうでは桜の下、主人公とその相手が微笑んでいる。

さて、これでゲームもコンプ完了だ。なんだかんだと全ルートをクリアしてしまった。

俺は苦笑を浮かべ、エンディングを迎えたゲームから視線を外そうとした。

にゃぁん、

小さく、猫の声がした。

「…リビカ?」

俺の部屋に居るのは、俺と、そして飼い猫であるリビカだけだ。
そう思い、声を掛けながら声のした方向を見ようと振り返ったあたりで。

俺の意識は白に染まり、そこでぷつりと記憶が途切れた。











だいぶ前にブログでのっけた絵の子の話。
トリップ前は身長とか標準体型な普通の大学生です。