《 いもうとの話 》
自称捜索救出隊のリーダーである九重名月には、妹が居た。 妹と言っても、義理の妹、とか、妹的存在、とかいうものではない。 まあ、従妹も居るので数えるのなら妹が二人居た。といったところだろうか。 片方が従妹で、片方は、滅多に人前に出ることのないひとつ下の実の妹である。 「え?九重くんって妹さん居たの?」 たまたま口から滑り落ちたのが原因で、自分に妹が居るという話になり、みんなが驚いたような顔をした。 それほど意外、なのだろうか。自分ではよくわからない。 「へぇー知らなかった。妹さんていくつくらいなの?中学生かな?」 「いや、ひとつ下だ。」 首をかしげて訊ねてくる千枝にそう答えると、ん?とそれぞれ疑問に思ったのか、陽介が口を開いた。 「ひとつ下、ってことはこの学校にいたのか?それとも、お前の両親と一緒に外国に行っちまったとか?」 「どっちでもない。」 「ええっと…つまりどゆこと?」 怪訝そうな表情を浮かべる面々を見回して、名月は小さくため息をついた。 「昔…色々あって、易々と外を出歩けないんだ。こっちには一緒に来たけど、ずっと家に居る。」 「え…?」 「ずっと、って…。」 訝しげだった皆の表情が、困惑の色を浮かべる。 が、ここで話すつもりはないので黙っていると、悪いことを聞いてしまったのか、とそれぞれが口を噤んだ。 ふと、考える。 彼女たちならば、妹の友人になってくれるのではないだろうか? 「その…、妹は同年代の友人が居ないんだ。…出来たら、二人とも、妹に会ってみてくれないか?」 「私達?」 「そりゃ、構わないけど。妹さん、急に押しかけたりして大丈夫かな?」 「多分…大丈夫だろう、俺が居れば。」 それに、妹のアレは男相手の時だけだ。 「ちょ、おいおい名月、なんで俺には声掛けてくれないんだよ〜」 がっくりと肩を落とす陽介に、しばし考える。 「…来てもいいが、条件がある。」 「おう、なんだよ?」 「自分から声を掛けない、自分から近づかない、不用意に触らない。これを護れるんなら来てもいい。…と、思う。」 「ちょ…おま、ガード固すぎだろソレ…。」 絶句したように見てくる陽介に、本当なら来るなと言いたいところだ、と心の中で呟いた。 さっき提示した条件が護れるなら、多分、大丈夫だろう。多分。 そうひとりごちながら、何も起こらなければいい、と名月はため息をついた。 夢主お兄さんなP4主はシスコンで心配性で男には厳しいフェミニスト…だと思う。 |