《 条件反射 》
堂島家の玄関まで来た。 鍵を開けて玄関へ入ると、菜々子の靴がないことに気づく。 「あ、おかえりなさい、」 居間に居たのか、妹の声が聞こえ、その足音がこちらに来ることに気づいて、名月は慌てた。 「まて、、ちょっと待てこっちに来るな、」 「え…?」 きょとん、としたような声と、の姿がこちらから見えたのは同時で、そして、陽介が口を開いたのもまた同時だった。 「え、この子が名月の妹!?」 「ッ!?」 陽介の声に、はびくりと足を止め、不安そうな表情でこちらを見、じり、と後退さった。 「ぁ、ぅ…」 ぱくぱくと、顔を青くして陽介を見るの姿に、千枝と雪子、そして陽介も驚いたような、そして怪訝そうな表情になる。 「あ…っと、悪い、驚かせちゃった、よな…?」 「っ…!」 困惑したような表情の陽介の言葉に、はびくっと体を震わせて、弾かれたように居間へと踵を返す。 「あっ…!」 「っくそ、だから連れてきたくなかったんだ…陽介はここで待機!」 「え、は、え!?」 「!」 当惑する陽介達を放置し、を追う。 は窓際の端っこで頭を抱えて座り込んでいた。 その華奢な体が、小さく震えている。 「、」 「おにい、ちゃ…や、やだ、しらないよう…しらない男がなんで、うちに来るの…!」 「ごめんな、先に連絡しておけば…」 「や、やだやだやだこわい、いやぁあ!」 「っ…!」 一種の恐慌状態に陥ったを抱きしめると、震えていた体は徐々に呼吸を整えていく。 ぽんぽん、と軽く背を叩いてやれば、はそのリズムに合わせて息を吐く。 聞こえてきたのは、名月の妹だという少女の悲鳴のような泣き声だった。 陽介達はそれぞれ、顔を見合わせる。 「花村、面識は?」 「全く無い。初対面。てか、あんな美少女一度でも見てたら忘れないって。」 「こわい、って、聴こえたね。」 「…悪い、待たせた。」 気まずい表情で玄関に戻った名月の後ろには、怯えながらも平常を取り戻した少女の姿。 名月と同じ色素の薄い髪に、灰を帯びた瞳、透き通るような白い肌の美少女だった。 「とりあえず、上がって。」 「あ、うん…」 「えと、おじゃましまーす。」 「あー…なんか、悪かった。」 最後に陽介が謝ると、と言うらしい名月の妹は、ふるふると首を横に振った。 兄の腕を掴んで放さない様子から、ひとつ年下と聞いていたけれど、それより年下なのでは、と思ってしまえるほどだった。 「えーと…陽介、約束破ったお前が悪いんだからな。」 「う、それは…すまん。まさかあんなになるとは思わなくて…。」 「だから男は連れてきたくなかったんだ…。、こいつは陽介、この二人は千枝と雪子、皆俺の友達だ。」 「ぇ、ぁ、ん…ぇと…、九重、、です…。さっきは…ごめん、なさい。急だったから、気が動転、しちゃって…。」 「は極度の男性恐怖症なんだ。俺以外にはああなる。」 「さ、最近は、お兄ちゃんが居れば、は、話せる、もん…。」 「ああ、そうだな。」 ぽむぽむと頭を撫でれば、えへへ、と少し照れたようにしては顔を俯かせた。 「っちょ…かっわい…!」 「やべーなんか胸がドキドキしてきた」 「あんな妹、私も欲しいなぁ…。」 ほのぼのしてる兄妹を見て、3人はそれぞれ呟いた。 ちなみに陽介の呟きの時だけ、名月が一瞬睨みをきかせたのに気付いたのは、殺気を送られた陽介だけだった。 おにーちゃんは妹につく悪い虫に容赦しません。 |