《 過去と今 》



アメルが立ち去ってしまって、俺は仕方なく廊下へと出た。
やっぱり無理してるよな、アメル…。

「あ、!」

後姿に声を掛けると、表情には出ないけれど怪訝そうにが小首を傾げる。

「どうした、マグナ?」
「今、アメルに会わなかったか?」
「…あぁ、聖女か。外へ行くようだったが…。」

まだ名前を覚えていないのか、アメル、という名前に少し考えるようにしては答えてくれた。
俺はその返答にちょっと肩を落とす。

「マグナ?」
「ああ、うん…。なんか、さ。アメル、凄く無理してるよな…そんな気をつかわなくたっていいのに…。」
「………。」

は俺をじっと見て、そうして、ぽつりと口を開いた。

「…憂いを伝播させたくないのだろう。」
「え?」

意味がわからずきょとん、とを見ると、小さくため息をついてから答えてくれる。

「自分のせいで誰かが暗い顔になる、あるいは、気分を悪くする。そういうものに、耐えられないのだろう。」
「でも、今回のはアメルのせいじゃないだろ?村を焼いた、あいつらが悪い。」

は小さく苦笑した、ように見えた。

「お前の心からの声を、聖女に届ければ良い。」
…。」

それは本当に一瞬で、すぐにいつもの無表情に戻ってしまう。

「…それだけで、アメルは無理しなくなるのかな、俺なんかの言葉で…。」
「心からの言葉というものは、心へ届くものだ。あの聖女には…お前の言葉が一番有効だろう。」

何故か後半を、何か思い出すように言って、は口を閉じた。
誰のことを思い出してたんだろう?
でも、不思議との言葉には説得力があるような気がした。

「…そっか。俺、アメル探してくるよ!」
「ああ。」

俺に何が出来るかはわからないけど、今は多分、が言ったみたいに、アメルと話すことが大事なんだ。
そう、思えたから。











どちらかというと夢主にとっての「過去と今」なタイトルでマグナ視点。
時期的にはミモザ達の屋敷に転がり込んだ後くらい。