《 予兆と夢 》



その人は、俺より背が高かった。
その人の声は、無機質なようで、子供のような。

でも、その温度は、なにも、変わっていなくて。

―――…た、………?

いつも淡々と、でも俺の相手をしてくれて。

泣きたいくらい、胸がいっぱいになった。

すき。すきだよ。だいすきだ。

切なくて胸が苦しくて、でも幸せな。









「…ナ、いい加減起きろ、マグナ!」
「っうわ!?」

不意に聴こえてきた声に、俺は慌てて飛び起きた。
珍しくも声を大きく荒げたのは、俺が護衛獣として召喚してしまった、だ。
いつもの無機質な視線が、今はどこか呆れの色を宿しているように見えた。

「あ、あれ、?えと、おはよう??」
「…ああ。それで、今日は兄弟子の授業があるのではなかったのか?」
「え?」

の言葉に、俺は寝起きに混乱する頭で記憶を掘り返す。
そういえば、昨日色々あって出来なかった授業というか講義を、今日は午前中からやるって言ってた、ような。
そう思い、ふと窓を見れば、見事に明るかった。多分もうすぐお昼なんじゃないだろうか。

「うえ!?ど、どうしよ…!」
「…仕方あるまい。私が先に兄弟子に話をしておいてやる。…軽減されるかどうかは知らんがな。マグナはさっさと着替えて顔を洗ってくるんだな。」
「あ、う、うん、ごめん…。」
「それから、朝食なら少し狐が確保してそこのテーブルに置いてある。後で感謝しておけ。」

言われてテーブルを見れば、パンとスープ、果物が置いてあった。
護衛獣二人には本当に感謝しきれない。

「ごめん!でもありがとー!大好き!」
「……お前は…、……はあ、そうか。」

は少し驚いたように瞳を揺らした後、納得したように頷いた。
一体どうしたんだろう?
疑問に思っている間に、ではな、なんて言ってはさっさと部屋を出て行ってしまった。
さっき言ってた通り、ネスに話を通しに行ってくれたのだろう。

「…あ。」

ふと、さっきまで見ていた夢をぼんやりと思い返して。

「あの人…に似てた、かも…?」

ほとんど姿かたちも覚えてないけれど。
雰囲気、というか。
何か空気が、似ていたような気がして、俺はそう呟いていた。











マグナ→主人公っぽく。恋愛と親愛の狭間の愛情。