<蒼き英雄と赤の弓兵>









暗闇さえ射抜く赤の瞳に、瞬間見惚れた。

―――ああ、憧れた。

自分が未だ■■■■であった頃、確かに憧れた姿がそこにはあった。

獣の如きその構え。気配。
闘気などとは生温い、気を抜けば殺されるほどの殺意。

既に磨耗した記憶が、彼を前に蘇る。
綻びは既にあった。
そう、自分の主たる彼女を見た瞬間。
彼女の名前を聞いた瞬間。

―――これまでの妄執を実現出来る奇跡を感じるより先に、確かに感じたそれは。

懐かしさ、愛しさ、…―――そして、深い懺悔。

赤い少女に感じたそれは、自分が彼女を守ろうと誓うのに十分な理由だった。
戦闘態勢に入りはしたものの動かない自分に、さすがにランサーが首を傾げる。

「どうした、此処まで来て戦意でも喪失したか?」

問う声は、あくまでも軽やかに。
ク、と笑みが漏れた。
そうだ、この男はそういう性質だった。
だからこそ自分も、肩を竦めて皮肉な笑みで返す。

「何、少々物思いに耽っていただけだ。貴様が来ないならばこちらから行くぞ、槍兵?」
「余裕なこった。なら存分に闘おうじゃねぇか、弓兵よ?」

ハ、と笑んで、ランサーは言い放った。
彼の槍兵は正しく英雄。
対峙する相手に不足なし。

白と黒の夫婦剣を手に、蒼き英雄と対峙せんと赤い外套が翻った。





…あ、あれ…?槍弓を書こうとしたのになんでこうなってるんだ…?
士郎時代、英雄の名に正しい気質の槍に憧れたんじゃないだろーかという捏造前提。
弓と凛の関係はあくまでコンビで。カップリングじゃ生温いと思うのですよ!
(2006/1/20)