明らかにまだ少女と呼んで良い年齢の女の子が、彼ら二人に絡まれていた。

(って、あの子…どっかで見たことあるような…)

あたしはそう思いながら、彼らの手が少女に伸びようとした瞬間駆け出した。




Awaking and escape - 彼は覚醒する -



「せやっ!!」

ドカッ!!

走りながら一人に蹴りを繰り出し、あたしの蹴りをまともに浴びた男が向こうの瓦礫に突っ込む。

ドンガラガッシャーン!

その男は、瓦礫に突っ込んだまま動かない。
どうやら気絶したらしい。

「な、なんだっ!?」

先ほどまでニヤニヤとした笑みを浮かべていた男が、慌てたようにこちらを見た。
少女の方は驚いたように目を見開いて、こちらを見ている。

「こんな小さい女の子相手に、何やってんのよ!恥ずかしいと思いなさい!」
「んだとこのアマ…!」

男が懐からナイフを取り出し、あたしに切りかかってくる。
あたしはそれを危なげなく避けて、男に向かって足を振り上げる。
それを男は掠めただけでかわして、あたしの足をつかんだ。

「っ!」

そのままぐい、と引っ張られて、あたしは体勢を崩す。
男があたしの背中めがけてナイフを振り上げ…―――

(間に合わないっ!?)

その瞬間。

ガキィンッ!!

「え、…?」

金色の髪。
見慣れた剣。
あたしは驚きに、呆けたような表情のまま固まった。

「大丈夫か?」

澄んだ声。
意味のなさないうめきしか、聴いたことがなかった声。

「クラウド…?」

あたしの呼びかけに、彼は疑問符を浮かべたまま、首を傾げる。

「おい、?」

少し心配そうに眉を寄せて、クラウドがあたしに訊ねた。

(あたしの、名前…?)

「あ、う、うん…平気。」
「なら良い。その子と一緒に下がってろ。」

そう言ったクラウドの言葉通り、あたしは少女を連れて後ろに下がった。
クラウドが、バスターソードを振り上げて男と戦う。

(なんであたしの名前、クラウドが…?)

もしかして、ザックスのことも覚えているんだろうか。
あっさりと男を気絶させ、クラウドがこちらに向かって歩いてくる。

「怪我はないか?」
「う、うん…。」

頷いて、あたしは少女を見る。

「君は、大丈夫?」

少女は俯いたまま、こっくりと頷いた。
それにほっとして、あたしはクラウドを見る。

「あの、クラウド、一体いつ目が覚めたの?」
「いつって…―――ああ、さっき。目が覚めたらが居なくなってたから少し探して…。」

クラウドはあたしの問いを疑問に思う様子もなく答える。

「ダメだろ、。なんでも屋の会計が一人でふらふらするなよ。」

何処か呆れを含んだ言葉に、あたしはぎゅっと心臓をつかまれたような感覚に陥った。
ああ、そうなのか。

(会話は覚えていて、でも、ザックスのことは忘れてる…。)

あたしの存在以外、彼の中はゲームと同じ。

「…おねえちゃん?」

少女が、心配そうにあたしを見上げた。

、傷が痛むのか?」

少女の声を聴き、クラウドまであたしを覗き込むように見る。
綺麗な顔は、もう見慣れたはずなのに。

「…ん、少し、傷開いたみたいで…。」

あたしは泣きそうになりながら、そう答えていた。
クラウドはあたしの返答を聞くと、少女に尋ねる。

「すまないが、近くに診療所か、もしくは傷の手当てが出来るところはないか?」

少女はあたしの服をつかんだ手を離して、右の方向を指差した。

「こっち、こっちに、おうちがあるの。」
「わかった。」

クラウドは頷いて、次の瞬間あたしの体を抱き上げていた。

「く、クラウド…!?」
「大丈夫だ、心配するな。」

(そういう意味じゃないんだけど…。)

あたしはこれ以上言っても無駄だと思って、諦めてクラウドに体を預けた。
クラウドの心臓の音が聞こえる。
確かに鼓動を刻む音。
そうして、思い出した。

(あの子…マリンだ…。)

クラウドを必死に案内する少女の後姿を見る。
向かう先は、おそらく。
クラウドの幼馴染の経営する…―――セブンスヘヴン。










クラウド喋ったけどこれクラウドなんだろうか…。
うちのクラウドはこんなんです…ハイ。

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