あたしの予測した通り、少女に案内されたのはセブンスヘヴンだった。
裏手から案内してくれた少女は少し待ってて、と言って奥のほうに駆け出す。

「ティファ!」

少女が呼んだその名前に、クラウドが僅かに目を見開いた。




Awaking and escape - 彼女と彼と -



「どうしたの?マリン」
「ティファ…?」

少女に連れられて来たティファに、クラウドが呆然とした声で呟く。
ティファはえ?と首を傾げ、クラウドを見て口を手で押さえた。

「クラウド…!?」
「ああ…。」

クラウドは頷いて、あたしを見る。

「すまない、怪我の手当てをする道具だけでも貸してくれないか?」
「え?…だ、大丈夫っ!?」

クラウドの言葉にあたしを見たティファは驚いたように目を見開いた。
そうしてすぐに頷いて、二階へと案内する。
クラウドはティファについて歩き、あたしをベッドに横たえた。

「大丈夫か?…。」
「大丈夫だよ…傷、開いただけだから…。」

あたしの言葉にクラウドは顔を曇らせる。
階段を上ってくる音が聞こえて、ティファが姿を見せた。
抱えていた治療道具を傍の机に置いて、口を開く。

「クラウドはあっち向いてて。」
「?」

クラウドが意味がわからずきょとんとした表情を見せる。
なんだか少し、可愛い。

「この子の服脱がすから。」
「っ!あ、ああ、わかったっ」

ティファの言葉に、クラウドは少し顔を赤くして勢いよく向こうを向いた。
ついでにドアの傍まで逃げ出している。

「ごめんね、服、脱いでくれる?」
「あ、う、うん…。」

あたしは言われるままに服に手を掛けて上着を脱ぐ。

「ひどい傷…一体どうしたの?」

ティファは顔を歪めながら、お湯に浸した布で血を拭っていく。
どう答えたものか、とあたしが思案していると、向こうを向いたままのクラウドが答えた。

「ちょっと因縁の相手に追われててな…。」
「もう、クラウド男の子なんだから女の子守らないとダメじゃない!」

クラウドはう、と言葉に詰まる。
あたしはそのやりとりに思わずくすくすと笑ってしまう。

?」

ちょっと不機嫌そうなクラウドの声。
多分、あたしが笑ったから不貞腐れてるのかな。

「いいの、気にしないでよ。…自業自得みたいなものだし。」
「〜〜だからって、俺を庇うことはなかっただろ…。」

どうやら、クラウドの記憶ではあたしはクラウドを庇ったことになっているらしい。
まぁ、間違いではないけれど。
ぶつぶつとまだ文句を言いそうなクラウドは無視して、あたしはティファの手の行方を見る。
すっかり血を拭われたあたしの胸の傷は、やっぱり少し開いていて血が滲んできていた。

「…痛い、よね…少し我慢しててね。」

ティファが心配そうに言って、あたしはそれに頷く。
傷薬と思われるものを塗った布を傷に押し当てられ、ひんやりとした感触に首をすくめる。
包帯を巻かれて、あたしはティファに何かを渡された。

「これは…?」
「血まみれの服、また着るの嫌でしょ?私のなんだけど、貴女にあげるわ。」
「あ、ありがとう…ティファ、さん?」

あたしの言葉に、ティファは照れたように頬を赤らめた。

「やだ、さんなんてつけなくていいわよ!」
「じゃあ、あたしのことも、って呼んで、ティファ。」

ティファはええ、と笑った。
綺麗な笑い方だと思う。
ごそごそと、あたしはティファに貰った服に着替える。

(…よ、良かった、露出系じゃない…!)

ティファの服、ということで少し心配していたが、普通の服だった。
あたしが元着ていた服からか、紺色の長袖。

「クラウド、もうこっち向いていいわよ。」

こちらを向き直ったクラウドは、あたしの寝ているベッドまで歩み寄り、ほっとしたような息をついた。

「悪いな、ティファ。」
「いいわよ。気にしないで。あ、、これ痛み止めの薬。」
「ありがとう」

実は既に痛みには慣れてはいたのだが、やはり痛いものは痛い。
あたしは素直に感謝して水と薬を喉に流し込んだ。

「怪我が治るまで、ここに居ていいから今はゆっくり休んでね。」
「良いのか?」
「ありがとう…迷惑かけます…。」
「悪いな…手伝えることがあったら言ってくれ。」

ティファはうん、と頷いて、それからあ、と口を開いた。

「それなら、クラウドに手伝って欲しいことがあるんだけど…。」




物語が、始まろうとしていた。










ティファは美人なお姉さんですよ。

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