申し訳ないながらも、電話で昼食がいらないということを伝え。

あたし達は、例の学ランの二人組と共にお好み焼き屋さんに来ていた。










Story by which you touched - 変わらず進む物語 -










「いらっしゃいませー!って、あれ?ちゃん?」

「こんにちはーっ」


雪兎さんにきょとんと見つめられ、あたしはにこりと笑顔で挨拶をした。

それに雪兎さんもにこりと笑って「こんにちは」と返してくれて、それからあたしと一緒に居る学ランの二人、それからさくらちゃんを見て、首を傾げる。


「珍しい組み合わせ、だね…?」

「ちょっとワケアリっていうか…さすがにあの子一人で居させるわけにはいかないですしね。」

「なるほどね…。」


あたしと雪兎さんが話している間に、さくら達のところには桃矢さんが行っていた。

ふ、きっと今頃はあたしが見た時に「…ロリコン?」と思わず呟いてしまったあのシーンが繰り広げられているに違いない。


「今日はお手伝いの方はいいのかい?」

「あ、はい、さっき電話してきたので。」


あたしの言葉に雪兎さんはふうん、と頷いて、あ、と口を開く。


「?」


思わず疑問詞を浮かべるあたしの頭の上にぽん、と誰かの手が乗る。

この場でこんなことをしてくる人といえば一人しかいない。

振り返ったあたしの前には、笑顔な桃矢さんが。


「よぅ、。」

「桃矢さん…なんで会う度に人の頭に手を置くんですかっ!」

「ん?あァ…。」


桃矢さんは少し考えるように視線をそらし、それからぽむぽむとあたしの頭の上を軽くたたく。

そうして、ニヤリと笑う。


「丁度いいんだよ、お前の頭の位置。」

「って、そんな理由かーっ!!」

「あはははは!」


まるで漫才をしているかのようなあたし達に、雪兎さんが耐え切れずに噴出す。

じろりとそちらを見やれば、雪兎さんはぴたっと笑うのを止めていつもの笑顔に切り替えた。(プロだ)


「ごめんごめん、なんか面白くってさ。あ、そろそろ行った方がいいよ。」

「そうだな…俺達も喋ってる場合じゃなかった。」

「はーい。それじゃ、また。」

「あ、ちゃん、僕も行くよ。」


そんなこんなで桃矢さんに挨拶をしてから、あたしは雪兎さんと一緒にさくら達の居る席に向かい、さくらの隣に座った。


「わ、おいしそーw」


朝…もとい、起きてから何も食べてないあたしには、ご馳走以外の何者でもない。

ついでに言えば、これは彼らの奢りなので尚更。


(人のお金で食べる食事ほど美味しいものはないわよね。)


「ところでお客さん、まさかこの子達に悪さするつもりじゃないだろうね?」


にっこり笑って言った雪兎さんに、二人は目に見えて肩を強張らせる。


「ど、どうしてそんなことを…!?」

「お客さん達、あんまりいい噂聞きませんからね。」


ぎくりと身体を強張らせる二人を尻目に、さくらは黙々とお好み焼きを口に運ぶ。

なんだかたどたどしい様が小さい子供みたいで、可愛らしい。


「美味しい!」


ぱぁっと笑顔になるさくら。

それに視線を奪われるその場のメンバー。あたし含む。


「とっても、美味しい!」


小首を傾げて、にっこりと。

とても幸せそうに笑うさくら姫は、それはもう極上に可愛らしく…!

嬉しそうに笑っているさくらを見ながら、あたしは自分の顔がにやけるのを自覚していた。


(もーさくらってば超絶可愛いーー!)


にまにましながらさくらを見ていると、きょとんとした顔でさくらがこちらを見た。


「どしたの?さくら。」

さん、食べないの?」

「あ、食べるよー。いただきます!」


あたしはそう言って、お好み焼きを口に入れる。

お好み焼き独特のあのソースとキャベツ、その他の具が絶妙なハーモニーを奏でて…。


「くぅぅっ!美味しーw」


美少女を傍らに美味しいご飯…幸せ以外の何者でもないわね!

ふと、まさにご満悦といった表情でお好み焼きを食べているあたし達の方をぼーっと見てる二人に気付く。

さくらが可愛いのはわかるけど、いい加減食べないと焦げそうなんで、あたしは口を開いた。


「ねえ、いい加減食べないと焦げるわよ?」

「わっ!?」

「あ、ホントっす!」


慌てて食べ始める二人を見て、あたしは思わず笑みを浮かべた。

うん、悪い人達じゃないんだよね、本当は。

ただちょーっとばかり周りが見えてないくらいなだけ、なんだと思うし。

そう思いながら、あたしは再び絶品なお好み焼きに意識を集中したのだった。























一方その頃。

行方をくらましたさくらを捜索していた小狼達の元に、一人の少年がやってきていた。


「小狼くーん!」


その声に気付いた小狼が振り返る。

そうして彼の事情を聞くにつれ、小狼達の顔が驚きに変わった。


「なんだって!?さくらが?」

「はい!奴らと一緒でした!」


正義の言葉を確認すると同時に、小狼が地を蹴る。

と、そこに正義の静止の声が掛かった。


「待ってください!僕に、考えがあります。」

「考え…って…?」






















イレギュラーを含んでも、物語は変わらずに進んでいく。

けれどイレギュラーを含んでいるという時点で、物語の道筋は僅かに僅かに。

ほんの僅かずつ、軌道を変えていく。






















特にこれといっては…。
あえて言うなら、さくら夢?いや、雪兎さんとか桃矢夢かもしれません(笑)


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