どこまで一緒に居たものか、と迷いながら。

結局あたしは彼らのアジトの倉庫まで一緒に来ていた。










Story by which you touched - 彼女と羽根 前編 -










きょろきょろと物珍しそうに辺りを見渡すさくらが、不思議そうに口を開く。



「ここ、どこ…?」

「へへん、俺達のアジトに決まってるっす!」

「余計な事言わずに早くしろ!」



得意げに言った彼に突っ込みが入り、慌てて扉を開く為のスイッチを押しに行った。

…素で漫才よね…。

なんとなくそんなことを思いながら、あたしは辺りをきょろきょろと見渡した。

潮の香りに、漂う湿気。

辺りはいつの間にか、夕方という時間に差し掛かっていた。



ガラガラガラ…



辺りが静かな為か、やけに大きな音を立てて倉庫のシャッターが開いていく。



「わぁ…。」



倉庫の中を見て、さくらが楽しそうな声を上げた。



「ひろーい!」

「なぁ…っ!?」



二人の驚愕の声など全く耳に入っていないかのように、誰もいない倉庫の中をくるくるとさくらは回る。

それはそれは、楽しそうに。



この子にとって、なんでも面白いのかもねー…。



今のさくらは、羽がほとんど戻っていなくて。

いわば、真っ白な、何も知らない純粋な子供のよう。



もっとも、子供独特のある種の残酷さを、彼女は持ってはいないようだけれど。



かさ…っ



不意に風が吹いて、あたしの足元になにやら紙が舞い降りる。

それはまるで、始めから設定されていたかのように。

イレギュラーである、あたしの元へ。



「子分たちはどこに行ったんだ!?」

「ねぇ、これ…。」

「え、なんすか?」



あたしが声をかけると、半ばぱにくっていた彼らがこちらに視線を向けた。

そうして視線を、あたしから、あたしが差し出した白い紙に移す。



「"我々はボスのあまりの負けっぷりに愛想が尽きました。もうチームにはいられません。皆で出て行きます。探さないで下さい。チーム一同。"」



ずざ…っ



紙に書いてあった文字を読んで、リーダーのほうが崩れるように膝を地に付ける。

がっくりとうなだれた姿には、なんというか…ひどく、哀愁が漂っていた。



「そんな…。立ち上げから25年…苦労に苦労を重ねて、やっとここまでチームを大きくしたのに…。」



うっすらと涙さえ浮かんだその時、さくらがきょとんと問いかける。



「どうしたの?」

「どうしたのじゃねえ、お前の仲間のせいだぞ。」



涙を見られまいと、さくらから顔を背ける。

さくらは小首を傾げて、彼の前にしゃがみこんだ。



「お前達のせいで、俺のチームは…っ」



肩を震わせて泣く彼に、さくらはそっと指でその涙を拭う。



「ないちゃだめ。」

「…?」



さくらの意外な言葉にか、彼はさくらを仰ぎ見た。

そこには、さくらがふわりと微笑んで。



「ないちゃ、だめ。」



ひどく優しい声で、さくらは言った。



なんだかほのぼのしい雰囲気で微笑みあうさくらとリーダーを横目に、あたしと彼のチームメンバーは苦笑しながらも彼らを見守った。

なんだかとても、優しい空気があったから。

少しの間をおいて、彼はがくり、とうなだれた。

「俺の負けだ」と、言葉を漏らして。






















「なぁ、アンタ。」



不意に声を掛けてきたリーダーに、あたしはきょとんとしてそちらを向いた。

そこには珍しく(?)真剣な表情の彼の姿が。



「どうしたの?」

「アンタ、確か笙悟のとこに居るって言う居候だろ?」

「…知ってたの?」



ていうか、敵対してるとこにまでそんな情報が…。

思わず遠目になるあたしに気付くことなく、彼は続ける。



「頼みがあるんだ。」

「頼み?」



聞き返すと、彼はこくり、と頷いた。

ここで笙悟の知り合いであるあたしに頼まれることと言ったら、ひとつしか思い当たらない。

それに思い至ったあたしに、彼はこう言った。



「笙悟と連絡を取りたい。」



と、決意の篭った瞳で。






















「…なんだかんだ言って、あたしも結構お人好しなのかしら…。」



思わずそう呟いて、苦笑する。

すべてではなくても、自分は彼らが悪い人じゃないことを知っているから。

ちょっとずるいかな、と思ってはいるのだ。

自分が彼らのことを知っていることに対して。

けれど、自分が知っていることが全てなわけじゃない。

少しだけここで生活して、ほんの少しずつ、知らない面も見えてきて。

それがひどく嬉しい。

公衆電話の受話器を持ち上げて、既に覚えた笙悟宅の電話番号を押す。

今日は確か、仕事があるとか言ってたから今頃は自宅に戻っているだろう。



プルルル…



『はい、浅黄酒店…』

「あ、あたしです。です。」

?お前、こんな時間までどこ出歩いてるんだよ…。』



あきれたような言葉は、笙悟本人のもの。

電話の奥から笙悟母の朗らかな笑い声が聞こえてくる。

まるでお兄ちゃんね、なんて。

思わずそれに笑みを浮かべて、言葉を続ける。



「えっと、悪いんだけど、少し港の方まで来てくれない?」

『港?…お前、まさか…。』



何か思い至ったのか、胡乱げな声。

溜まり場としている場所、やっぱり知ってたのかな?

笙悟の反応にあたしはそう思い、慌てて付け加える。



「別につかまってるとかそういうんじゃないから。リーダーの人が笙悟に話したいことがあるんだってさ。」

『…判った。すぐ行く。』



やれやれ、とでも言い出しそうな口調で笙悟は言って、電話を切った。

あたしも受話器を置いて、さくら達のほうに戻っていく。






















彼らの新しい面を見るたびに、嬉しいと感じるのは。

きっと。

此処はつくりものの世界なんかじゃないって、自分が信じたいから、なのかもしれない。






















収まりきらなかっ た…!!_|\○_

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